白山砂防(尾添川流域)現地見学会♪~2021.11.5

山と雪のエリア 【手取川水系尾添川周辺】
白山手取川ジオパーク「水の旅案内人 “pochi”」です。

じつは私、 白山砂防女性特派員” というお役目もやらせていただいてます

「白山砂防女性特派員」とは…

私たちの命を守る、白山砂防事業の重要性や必要性を体験・実感して、得られた知識を女性目線で発信していく活動 です。

「砂防」とは…

土石流、地すべり、がけ崩れなどの土砂災害から人々の命や暮らしを守るために行われる事業 のことをいいます。

主体は、国土交通省/金沢河川国道事務所さん♪
が、しかし、コロナの影響で去年は未開催、今年も中止がつづき、正直、諦めモードのところに「現地見学会開催」の朗報が飛び込んできたー♬ 

\(^o^)/

今回見学する白山砂防の舞台は尾添川(おぞがわ)事前に貰った資料には、この春、山腹崩壊した山間の現場と砂防堰堤を見せてもらえるということだけど、詳しい説明は一切受けていない、見てからのお楽しみといったところか…
尾添川は、白山を源流とし多くの渓流を集めて手取川に合流する一級河川です。上流部は蛇谷川と呼ばれます。川沿いには、国道360号線や白山白川郷ホワイトロードが走っています。
朝8時半に、金沢河川国道事務所を出発したバスは、途中2カ所で特派員女子たちを拾い、白山麓の玄関口「道の駅 瀬女」に着きました。

①瀬戸砂防堰堤

道の駅 瀬女からは、直線距離で400mほどでしょうか。瀬女交差点を左折して、比咩(ひめ)の湯を通り過ぎ、突き当りの道を下っていくとバスが十分に旋回できる平地に着きました。目の前には、曲線が目を惹く美しい堰堤がありました。これが、瀬戸砂防堰堤♪

ちょっと不思議な形をしています。土砂を堰き止める壁が2カ所切れていますね。堰堤の役割といえば、土砂を止めること、のはずですが、これでは水と一緒に流れていってしまいます。

でも、それでいいんです♪

こういうタイプの砂防堰堤を「透過型砂防堰堤」といいます。

 透過型砂防堰堤って? 

大きな石は止め、小さな砂は流れるように工夫されたのが「透過型砂防堰堤」です。瀬戸砂防堰堤は、スリット型といって、コンクリートに切れ目を入れた外観。「部分」透過型砂防堰堤 というのだそうです。

員さんのパネルを使っての説明がありました。

はじめて瀬戸砂防堰堤が造られたのは、1952(昭和27)年。老朽化も進み何度か改築がされましたが、直近で完成したのが現在の形。嵩上げなどを施し 透過型 の砂防堰堤として生まれ変わりました。(平成21年着手/平成26年3月完成)

以前(左下の写真)は、水がカーテンのように流れる形をしていました。土砂は上流側に溜まり、移動が抑えられています。(こういうタイプを「不透過型砂防堰堤」といいます)

改築にあたって、不透過型だった堤体を透過型にしたのにはわけがあります

尾添川と合流して手取川を為すもう一つの河川、それが 牛首川」です。1980(昭和55)年、牛首川に手取川ダムが完成してから、下流の平野への土砂供給ができなくなりました。それは、あの千里浜の海岸線をも後退させる大きな問題にもなっています。

そのため、尾添川では、土石流などの急激な土砂流出は防ぎつつ、平常時には、下流域に土砂を安定的に供給できる 透過型砂防堰堤の整備が進められているのです。

 

 知らなかった!越流の凄まじさ!

これは今年の8月、堰堤を監視するために設置してあるライブカメラに映っていた映像です。凄くないですか⁈

今目の前で見ている川は穏やかそのものですが、台風並みの豪雨が続くと水の勢いはこんなにも激しさを増します。右上の写真は、濁流が堤体全体を越えてきています。これが、何時間も何日も続いたら…と思うとぞっとします。ライブカメラの映像は、インターネットでいつでも見ることができます。

➡ 白山砂防~ライブ情報

ホント、曲線が映える美しい堰堤ですよね♪ 下部は石造りで既設のもの、それをコンクリートで包んでかさ上げし、堤体の厚みも増しています(下流側の腹付け補強)。

これは2年前に、下流側から見た瀬戸砂防堰堤です。国道360号線から少し小径を入ったところから撮ったものですが、どうです?美しいでしょう♪ 大きくて見栄えがよくて自慢したくなる堰堤なんです♪

②中ノ川左岸の斜面崩落場所

次にバスが向かったのは、この春、大規模な斜面崩壊を起こした現場。秘境の温泉としても名高い岩間温泉山崎旅館さんの建物があるすぐ近くです。県道53号岩間一里野線が、がけ崩れで寸断されました。今回、私がいちばん気になっていたところです。

車窓から見る階段状になった丸石谷の砂防堰堤群(石川県の管轄かな♪)ちゃんと「溜まって」いますよ♪

急カーブを巧みに切り抜けるドライバーさんの運転技術に感心したり、紅葉に目を奪われたりしてるうちに30分ほどが経ち、着きました。

北部白山登山道の入口でもあるこの場所へは何度か来たことがありました。道路は砂防工事の資材運搬用として使われているので、ここからの一般車両は通行止め。ゲートが開いているのを見たのは初めて♪

特派員女子たち、赤いジャンパーが華やかです♪ どれだけ歩くかと思いましたがさほどの距離でもなく、やがてその風景は現われました。

 道がない…崩落の凄まじさ 

わかっていたはずなのに、やはりショックでした!

ざっくり切れ落ちた岩壁、道路の先端は今にも崩れそうです。注意深く近づくと…

【上部】急斜面には、いまだ転がり落ちそうな岩塊が見えます。2次3次の危険が否めない赤い肌

【下部】 崩落に巻き込まれて剥き出しになった引湯管や光ケーブルを通す防護管が見えます。作業道は、この出っ張った岩壁を巻く形で延びていました。もちろん、あとかたもありません。

【谷底(中ノ川)】露出した表土を見ただけで脆さがわかります。岩盤には程遠い。

崩落に気付いたのは、今年の4月、除雪の事前確認に訪れたときだそうです。ヘリコプターでの調査で、幅約190m、高さ約300mの崩壊であることがわかりました。

尾添川の源流である中ノ川上流は、このように荒廃が激しく、火山性堆積物や、温泉作用もあって、岩石がもろく崩れやすくなっています。

 中ノ川下流第2号砂防堰堤の快挙! 

悲しい現実がある一方、嬉しい事実もわかりました!この崩落斜面の直下に砂防堰堤があったのですが…♪

【谷底】かなり深いのでズームイン!

「中ノ川下流第2号砂防堰堤」は、昭和63年に完成した “鋼製スリット型砂防堰堤” です。

瀬戸砂防堰堤は、コンクリートだったけど

こちらは鋼製、いろんなタイプがあるんですね♪

完成から32年経ってますが、鋼製スリットは、みごとに土砂を止めてくれています。斜面崩落後(一年後)も、自らの骨を折ってまで土砂を捉えてくれたこと。いい仕事してるなーと思いました♪

 

 次へのシナリオ 

土砂は6万㎥流れたそうです。食い止めているとはいっても、谷底に溜まっていたら天然ダムと同じ(少しの出水でも土砂は流れやすい)

引湯管が切断され、一里野温泉には源泉を供給できなくなってしまい、秘境の温泉宿も、休業を余儀なくされました。残念なことですが、復旧にはまだまだ時間を要するようです。

そしてまた雪の季節がやってきます。この冬を今の姿のまま越せるとは思えません。最悪のシナリオを想定しながら砂防関係者は動いています。そのシナリオが次の現場へと誘います。

中ノ川斜面崩落現場をあとにして、バスは一路、白山白川郷ホワイトロードへ!滝、V字谷、柱状節理、アバランチシュート、見どころいっぱいの蛇谷の自然。園地では、姥ヶ滝や噴泉塔にまじかで触れ、谷底から見上げる岩壁の荒々しさに、尾添川支流の険しさを再確認しました。

 三ッ又合流点 

そうそう、ここを紹介しておかなければ…車窓からの瞬撮!

「三俣」ともいうらしい…中宮ビジターセンターとこれから向かう猿花上流砂防堰堤の間にあるここは、蛇谷川丸石谷川中ノ川の3つの河川が合流するところ(三川が合わさって「尾添川」になります)。正面に見えるのは、三又第一発電所

「出合」ってパワースポット的な “気” を感じる♪
車から降りて川の傍まで近づきたい♪

さっき見た斜面崩壊地の土砂は、中ノ川に落ちていきました。土砂は溜まっていますが、少しづつこの合流点を通って下流に流れています。

③猿花上流砂防堰堤 土砂捕捉工 工事現場

2018年と2020年に、白山白川郷ホワイトロード無料区間で土砂崩れが起きました。一里野温泉から1.6kmほど入ったところで、通行不能になりました。

 異形コンクリートブロックとの遭遇♪ 

復旧工事は終わっておらず、今も片側交互通行状態が続いていますが、このすぐ近くに猿花上流砂防堰堤へ下っていく側道がありました。車窓から見る景色は工事現場そのもの、iPhoneカメラが捉えたのは…

コンクリートの型枠? これは何でしょう?
尾添川に架かる仮設の橋を渡ったところでバスを降り、上流に向かって少し歩きます。

異形コンクリートブロックが、整然と並んでいます。尾添川の流れを堤で分けて右岸側から施工しています。クレーンが一台でフル稼働してますねー♪

対岸の山腹では、斜面崩壊した法面の復旧工事が進行中。かなり高いところまで足場が組まれていますね。ここまで下りて来なければわかりませんでした。

こうしている間も崖は崩れたいかもしれない、もし今地震でも起きたら⁈ と思うと命がけの仕事に頭が下がります。どうか安全に、工事が完工することを願うばかりです。

視線を元に戻しましょう

 “応急的” 砂防堰堤♪ 

ここでは何が行われているのでしょうか?
そしてそれは何のためでしょうか?

これは、コンピューターで作った工事の完成予想図です。海岸で見るテトラポットのような、テトリスのような…♪

現場代理人さんの説明がありました。ここで造っているのは、仮設(応急的)の砂防堰堤 だそうです。

中ノ川の斜面崩壊で発生した土砂は、6万㎥。この土砂を堰き止めているスリット式砂防堰堤を見、土砂を運ぶ中ノ川の終点である三ッ又合流点も確認しました。それは、今目の前を流れる尾添川に流れだし、瀬戸砂防堰堤を通り抜け、日本海へと続いていくのですが…

果たしてこんなに穏やかな状態がつづくでしょうか

崩落は、雪解け時期に起こりました。解けた大量の水分で地盤が緩み、一層脆弱になってしまったのかもしれません。雪の重みもあるでしょう。ホワイトロードでの崩落のように、2度3度とあるかもしれません。

崩落現場にまだ打つ手がないのであれば、大量土砂が流れる前提で対策を講じるしかない!

ということで、対処療法のようですが「仮の」砂防堰堤を築造することになりました。

手前と奥で見た目が違いますよね、それは中古品と新品、両方を併用しているからです。

白いブロックはこの現場で造られた新品ブロック。さっき見た型枠にコンクリートを流し込んで使います。一個の重さは、6トン、クレーンで吊り上げる限界は一日40個だそうです♪

手前のくすんだ色のブロックは再利用品です。いかにも使用済みという感じがしますが、まだまだ使えます!

堰堤といえば、現場打ちの一体型コンクリート構造体、と思っていたのでちょっとした衝撃でした。こうした「暫定的な」堰堤だからこそ、コンクリートブロックなんですね♪ 工期は短くて済むし、解体撤去も楽そうだし、再利用もできるからエコと…とっても便利♪

ところ変われば目的も変わる!異色の砂防堰堤? 製品や工法など興味が尽きません♪

 

 猿花上流砂防堰堤(本体) 

仮設の砂防堰堤の直下に、堰堤本体があります。これも興味深く…なぜかというと、この堰堤…

(水通し部分が)壊れているんです!

コンクリートブロックを見ていた視線を180°下流に移すと、こんな感じ

みごとな壊れ方、そしてすり減ってるー!下流へ回り込むとこんな感じ

このすぐ下部にある副堤も同じように水通し部分(中央)が破断し、摩耗が進んでいました。

猿花砂防堰堤は、「瀬戸」「御鍋」の両砂防堰堤とともにに昭和17年に建設が開始された歴史ある堰堤です。戦争で工事が中断し、完成は昭和44年になったということです。

勝手な予測ですが、猿花砂防堰堤が改築工事にかかった場合、かなりの確率で“透過型”に生まれ変わるのではないかと感じます。

それは、尾添川水系にある全ての堰堤の宿命のように思われます。

帰りの道すがら、バスの中から撮ったコンクリートブロックたち♪

まだ養生期間中かな? 出番が来るの待ってました♪

大好きな尾添川の渓流美♪ さようなら

現場見学を終えて

好天にも恵まれ、待ちに待った現地見学会は、最高に満足のいく形で終わりました♪

【瀬戸砂防堰堤】では、大きな石は止め、小さな砂は流すという「(部分)透過型砂防堰堤」のお手本を見せていただき、尾添川流域の砂防方針を理解しました。機能美ともいえるスリット型堰堤のフォルム。既設の石組みを活かす設計者のこだわり、実際に起きた濁流にもびくともしなかったことを知り感動しました。

【中ノ川斜面崩落現場】では、切断されたケーブル管や引湯管など、崩壊の凄まじさを生々しく感じました。同時に、直下の「中ノ川下流堰堤」が、崩落前後を通して本来の機能を果たしてくれていたこと。そのおかげで最小限の被害にとどまったことを理解しました。

【猿花上流砂防堰堤】では、コンクリートブロックを使った「仮設」堰堤の役割と重要性を認識しました。中ノ川から流出する大規模土砂に対抗するため、仮設とはいえ半年もの時間をかけて造られるものです。崩壊現場を見た直後だったので危機感は十分に共有できたし、一個6トンを1,000個=6,000トンも積上げなければ負けてしまうほどの水の勢いを想像して侮れなさを感じました。

今日明日またどこかで山は崩れているかもしれない。果てしない自然とのいたちごっこ?のようにも思いましたが、この地で暮らしていく以上、土と水を制御しないわけにはいきません。悪いことばかりでもなく恩恵も多く受けているわけで、白山砂防が、私たちの暮らしの基盤にあることを忘れてはいけないと思いました。

関係者の皆さんには感謝します。貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました<(_ _)>

 

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