今年も 白山砂防特派員、やらせてもらってます♪
じつは、小さなことですが今年から変更になったことがあります。
「白山砂防女性特派員」の「女性」部分がなくなりました。砂防を女性目線で追いかけるのは変りないんですが、時代の流れですかねー、お察しくださいませね♪
さて、7月の活動といえば、白山砂防管内の現場研修会です。今年も、主に甚之助谷で進行中の工事現場を見学させてもらいました。今回の順路はこちら
目次
①百万貫の岩
②猿壁砂防堰堤改築工事
猿壁砂防堰堤は、昭和38年に完成し、60年余りが経過していることから、かなり老朽化や損傷を受けています。土石流や大規模災害に備えて、機能向上を図るための改築工事が始まっています。
今年度は、右岸側(写真向かって左)の改築工事のために、川を渡るための仮橋を架け、堰堤までの工事用道路をつくっているそうです。本堰堤の工事(※腹付けコンクリート)は来年になりそう
※堤防断面を大きくするため、堤防法面にコンクリートを盛ること
仮橋の下には、規則正しく積まれた石たち。水の勢いに負けないくらいの大きさがあって流路を護ってます。コンクリートではなく、自然石を利用して整えられている姿が美しくて、暫し見とれました♪
橋を渡ると平坦に整地されたスペースがあり
巨石も操るバックホーがみえました。アームも太くて見るからに強そう♪
猿壁砂防堰堤は、白山で一番初めに “恋した” 堰堤でした♪チブリの森から別山へ通じる登山道の入口(猿壁登山口)の真向かいにあって、下山したあと、よく本堤の先端に座ってボーっと水の流れを見ていました(笑)
60歳を超えたんですねー、これを節目にしっかりメンテナンスしてまたバリバリ働いてほしいものです。
③甚之助谷 第6号排水トンネル
第6号排水トンネルは、砂岩ブロックの地下水を排除するために、昭和62年から平成7年にかけて施工されています。長さは300m近くあり、甚之助谷の排水トンネルのなかで最も長いトンネルとなっています。近年、地すべりの進行のせいで、トンネルが変形し維持管理に注意が必要な状態にあります。
柳谷上流砂防堰堤群の横にある階段を上って行った先に入り口があります。今日は不動滝の水量も多いです。上流はガスガスで何も見えません。トンネル内に入って見ます。
しばらく歩いて振り返ると、なるほどトンネルが歪んでいるのがわかります。周囲の土砂が動いて押しつぶしているからなんですね(せん断力)。変形が進むと地下水を排除する機能が低下してしまいます。これを復旧するのは相当難しいらしいです。
大小たくさんのホース(管)から水が流れ出ていました。
壁から直接、沁みでているところもあります。
※ ☝ 国土交通省 金沢河川国道事務所さんのHPよりお借りしました。
<甚之助谷地すべり防止工の概念図>です。
今、私たちがいるのが「排水トンネル」。そこに接続された「集水ボーリング」を通して水を集めます。水がたくさん集まるところでは「集水井」といって井戸を掘ってそこに集める、ということもしています。
集水ボーリングは、水を集める細い管(径40㍉)です。5㍉程度の穴が無数にあいています。打ち込まれたボーリングは地層に網の目のように張り巡らされて、さながら毛細血管のようです。
この第6号排水トンネルでは、その一端を見せてもらいました。
集められた水は、甚之助谷へ直に排出されます。
甚之助谷周辺の地層が蓄えている水の量がハンパないことがわかりました。
移動します
こんな岩盤からも常に水が沁みでているのでしょうか?コケの育ち方がユニークですね♪
崩れを抑えてます
外部に設置されるものもあるんですね。ホースの中をものすごい勢いで水が流れていて、暴れそうだったので位置を調整してます。
第7号排水トンネルの前を通ります。雨が止みません。どんどん酷くなりそう
④索道撤去工事
7号排水トンネルのすぐ隣に「索道基地」があります。昨年、万才谷排水トンネルが完成したのでこの施設は撤去予定なのですが、まだ時間がかかりそうです(おそらく最後)。
このお隣りにある工事用モノレール 👇
これに乗ると、「第11号排水トンネル現場」に連れて行ってくれます。雨は、益々激しさを増してきました。周囲もガスガスで視界はナシ!さぁしっかりつかまってー行きます!
⑤甚之助谷 第11号排水トンネル
第11号排水トンネルは、甚之助谷地すべりの右岸側上流ブロックの地下水対策として整備されてます。
ブロック(土砂)が移動するのを抑えるために排水トンネルが作られています。去年初めて見せてもらいましたが、お話を伺ったのはたしか外でした。今はどんなふうになっているんでしょう♪
トンネルの入り口ができていました。因みに去年はこんな感じでした。
トンネル内に設置していくライナープレートなどの資材がこの天空の広場にひしめいていました。(まだ中には入れませんでした)。因みにここの土台はどうなってるかというとこんな感じ
甚之助谷砂防堰堤を挟んで下から見上げたところです。傾斜地だし足場もメチャメチャ悪いところなのにスンと収まってて見惚れました♪
因みにモノレールはこんな感じ(写真は去年のものです、気持ちよかったー♪)
中に入ると外のやんちゃな天気がウソのようです。ここは傾いていませんでした(苦笑)
トンネルの突き当りでは職人さんが作業をされていました。壁(ライナープレート)の一部が剥がされています。腐食してますね。ここに沁みだす水の「pH値」が低い(酸性値―高)せいです。確か「pH2」と云ってたと思います。(それってレモン果汁と同じくらい⁈)それの修復工事のようです。
外すと云っても簡単ではないらしく、ボルトも一度キツク締め付けているので大変そうです。工具を使うとバリバリッ!っと凄い音が響きますが、皆さん慣れてるらしくどこ吹く風といった表情でした。「pH2」クラスの(酸性度の高い)水はどこからでも出るものではないそうで、最終的には支保工とライナープレートの間の空隙はモルタルで埋められます。
トンネルの中の湿気もハンパなく高いです💦
この排水トンネルから放射状に集水管を設置していきます。資料には18本の管が描かれていました。凄い!
⑥第一号大口径集排水工
「大口径集排水工」という言葉を聞いたことがありませんでした。いったい何なんでしょ?まずは現場へ
索道基地の裏側に櫓があってそこから見学です。と、言っても今伝えられるのはこれだけ。まだ本工事前で土台をつくっているところでした。階段状に見えるのが「かご枠」で、削った土砂を入れて積み固めていきます。
正面から見たら太陽光パネルに見える⁈
<大口径集排水工>とは、簡単に言うと、これまで使っていた口径サイズの小さい集水管(さっきみた径40㍉の塩ビ管)から、大口径の鋼製管に変えて、資機材運搬から集水能力まで従来よりもコストパフォーマンスをアップさせる工法、らしい・・詳しいことはわかりません。まだ実物を見れないので来年の楽しみにとっておきましょう。
甚之助谷の工事現場からはここでお別れです。
⑦別当谷砂防堰堤群上流域の改築
こちらも毎年見せていただいてる「別当谷」の風景。去年は無人化施工ができる重機をみせてもらいました。
これを使って、工事用道路を造ってるのだと云っておられました(昨年撮影)。
なぜに無人化施工をしなければならないかといえば、それは現場の状況に寄ります。ここは今年の工事用道路ですが、やはり落石や土砂崩れの可能性があるところ。人の命を危険にさらすことはできません。
別当谷の最奥地まで来て、土砂崩れで埋まりかけた堰堤を見ていると、生きている谷を実感します。埋まる、また造る、この繰り返しですが私たちが平和に暮らしていくために必要な事業です。
山を下ります。
現場見学を終えて
毎年楽しみにしている「砂防現場研修会」。今年は、大好きな「猿壁砂防堰堤」の改築工事が加わったと知りテンション上がりました。
昭和38年生まれの堰堤というと、劣化・損傷はあたりまえ。厳しい環境を経てきた今の姿を忘れないように目とカメラに焼き付けつつ、工事担当者のかたのお話に耳を傾けました。3次元設計データで表された計画図などをみせてもらいながらイメージを膨らませるのが楽しかったです。
甚之助谷で行われている「地すべり対策事業」は、排水トンネルのなかをみせてもらい、集水管から吐き出される地下水や、動く土塊の圧力に歪まざるを得なくなった様子を見、甚之助谷のもつ、とてつもない“動”のエネルギーに改めて脅威を感じました。
今回は、ずっと雨のなかの移動でしたが、だからこそ見れたであろう景色や気づきもあり、学びも多かったです。次回、雨のときは「傘さしより上下レインウェア」が、いちばんの教訓になったかも(笑)
協力くださった全ての皆さんに感謝、ありがとうございました。
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