白山砂防(牛首川流域)現場研修♪~2022.7.22

山と雪のエリア 【手取川水系牛首川周辺】
白山手取川ジオパーク「水の旅案内人 “pochi”」です。

今年も 白山砂防女性特派員、やらせてもらってます♪

「白山砂防女性特派員」とは…

私たちの命を守る、白山砂防事業の重要性や必要性を体験・実感して、得られた知識を女性目線で発信していく活動 です。

「砂防」とは…

土石流、地すべり、がけ崩れなどの土砂災害から人々の命や暮らしを守るために行われる事業 のことをいいます。

令和4年度初の屋外活動は、現在稼働している白山砂防工事現場施設の見学♪
国道157号線を白峰へ、今回は、牛首川を遡ります。

牛首川は、白山を源流とし多くの支流を集めて流れ、白山市木滑で尾添川と合流して手取川と名を変える一級河川です。上流部には、別当谷、甚之助谷、柳谷、湯の谷などがあり、下流には手取川ダムがあります。
今年の特派員は、人数も倍増! バス2台に分乗し、戻り梅雨の雨の中、金沢から白山麓を目指します。
白峰砂防科学館 ➡ 市ノ瀬ビジターセンター ➡ 白峰資材運搬道路 ➡ 柳谷導流堤 ➡ 別当出合 ➡ 市ノ瀬砂防堰堤

目次

①白山砂防科学館

白峰に着いて最初に訪れたのは「白山砂防科学館」。ここは、白山や砂防・防災について楽しく学べる施設。
リアルタイムで送られてくる白山情報(ライブカメラ)が見れたり、砂防の歴史がわかったり…展示物も豊富で、予習するのはもってこいの場所♪
初めて来ました!という特派員もいて、熱心に展示物を見たり、質問したりと、知的好奇心を刺激されまくり⁈
私はいつもこの地層レプリカで足が止まる。
粘土化しやすい「頁岩(けつがん)」の変質が、地すべり面をつくってしまう(黒いところ)困りものです。

②市ノ瀬ビジターセンター

白山砂防科学館の横にある白山国立公園センター、ここで国土交通省OBのかたの貴重な体験話がありました。
市ノ瀬には、かつて関わっていた砂防工事の現場事務所がある。それがこれ
と、教えられ驚いた! 市ノ瀬にくるたび、目にしていた古い建物、ここがかつての現場事務所!
冬場の5ヶ月を除いた7ヶ月、ここに通った。現場作業員は、今は通いだが、かつては永井旅館さんに泊っていたこともあったそうです。白山砂防の最前線基地、往時の苦労話を聴くのもまた愉し

③白峰資材運搬道路

昼食を済ませたら別当出合に向けて出発!
じつはこのとき、「資材運搬道路」なる道路が、どこを通っているのか、まったく知らなかった…。
駐車場を出てすぐ、バスは二股になった分岐を左(六万橋方向)ではなく、右の細道を上っていく。
そこは、よーく知ってる登山道への一本道(と思っていました)。

ここって、いつもチブリに行くとき使う道じゃん⁈

そう、もうなんども歩いている舗装路で一般車両は入れません。1kmほど歩いたところに登山口があり、そこからチブリ尾根や別山を目指すのです。

暫くすると、タイヤ洗浄プールが見えてきました。

下界からの付着物を洗い落とすため車両はここを通らなければなりません。じっさいに車を見たのは初めて!
ダンプと違って車高が低いため、ボディが傷つくのを警戒して慎重に入水しているようす。こちらまで緊張してきます。
通過したらまもなく猿壁登山口、道路を挟んだ向かいには、猿壁砂防堰堤 があり、そこを流れる細谷川に沿って道路は上流へと延びていた。バスは進む。そうか、これが、資材運搬道路か…。
この道路の行方はどこなのか、この先では何が起きているのか、それが今、明らかになる⁈ 

細谷砂防堰堤群

遠くの視界は望むべくもありませんが、明るい樹林の中の一本道、それもバス(高め)目線というのは、悪い気分ではありません♪

資材や燃料タンクなどが運ばれるヘリポートを通過、右岸・左岸と幾度か橋を渡ります。

次々に現れる 細谷砂防堰堤(群)は、全部で10基1号堰堤が完成したのは、昭和49年、工事は今も続いています。

因みに、この沿川で完成時期がいちばん古いのは、市ノ瀬砂防堰堤で昭和29年。次が、登山口前にあった猿壁砂防堰堤で、昭和38年です。

バスから降りたのは、細谷10号砂防堰堤を通過したところだった。ここからは、4号、5号、砂防堰堤が見える。

砂防堰堤は、上から(或いは下から)順番に造られているわけでも、数字順に完成しているわけでもなく、配置はバラバラ。未完成のものも有るそうです。

注目すべきは、その上に渡された一本の橋?

 

あれが、別当出合から砂防新道へ向かう吊り橋です。

一同、歓喜に似たざわめき♪ 無理もない(笑)この瞬間、それぞれの中でいろんなことが腑に落ちた感じだ。

その先には、崩壊地の別当谷や甚之助谷があります。

崩壊土砂を細谷砂防堰堤が食い止めて、下流に流れないように整備をしている。また、市ノ瀬も猿壁も細谷の砂防堰堤も、ここから下流の堰堤は副堤を持つことが多いけれど、ここより上(甚之助谷や別当谷)では副堤はつくれない。

なぜなら、谷の勾配が急すぎるから

一基づつ独立した砂防堰堤を段状に造ることになり、これが、砂防の父と呼ばれる「赤木正雄」氏が提唱した「階段状砂防堰堤」であり、日本で初めて施工されたのがここ白山砂防だった、ということは覚えておきたい♪
細谷第4号砂防堰堤を見ながら橋を通過、そのさきには、別当出合駐車場が広がっていました。

資材運搬道路(中飯場)

別当出合登山センターの前に来ると、バスは大きく方向転換して資材運搬道路のゲート前に一時停止。鍵が開けられ、道路内に進入♪ 蛇行をくり返しつつゆっくり進みます。すれ違う車はすべて工事関係車両。今日が平日だったことを思い出しました。
  
別当谷砂防堰堤を横切る橋を渡り、中飯場の登山道下にあるトンネルを抜け、甚之助雨量観測所を過ぎ、10分余りたったところが目的地。車外に出た私たちが、道路壁面に見たのは・・
ひどく歪んだ構造物!施工ミスじゃありません。
周辺の土塊が動いているため、こんなふうになってしまったのです。内部の石は列ごとに左右交互に積まれ、偏重しないよう配慮されているのがわかります。それでも動くのです。

ここだけなんですよね、ここから向こうは大丈夫なんです。

と、霧でまっ白になった道路の向こう側を見やった。

甚之助谷は、年に10cmほど動いている、というのはもはや常識⁈ が、どこもかしこも動いているわけではないようです。

少し歩くと、まともな壁が現れました。数年後には、ここもさっきのような壁になっているのかな…。

柳谷導流堤

雨が止みません。雨雲レーダーは、午後からは晴れると云ってたので期待していたのですが…
霧の中、爆音だけが鳴り響き、音の主は姿を見せてくれません。“晴れて…”
奇跡か⁈ 祈り始めて3分もたたないうちに霧はみるみる晴れていき、不動滝の末端下部が姿を見せてくれました♪
そして「柳谷導流落差工」 不動滝を流れ落ちる水を誘導し、勢いを殺すため階段状に造られました。無人化施工技術を活用した砂防工事や光ケーブルによる防災情報基盤整備が進められています。
砂防新道を歩いていると必ず出逢うあの風景のすぐそば(横上)まで来ているのだなーと思うと感動しきり♪
、同じ左岸の崖に見てしまった不気味な亀裂。いつかはわからなけど、あの岩の塊が崩れ落ちる日が来る(気がする)。せっかく造った堰堤も型枠ブロックも、呑み込まれてしまうかもしれません。
ふと、係官に向かってつぶやいてみる…

ここからだと、甚之助砂防堰堤群は見えないんですよね

砂防新道から見える風景を思い出てみてほしい。柳谷導流堤は見えてもその上流にある甚之助谷は、左に折れているため堰堤群は見えない。今目の前にある建物の向こう側に行けたなら…

じゃあ、せっかくなのでこの先まで行ってみましょうか

\(^o^)/

建物は、索道基地。そして作業に従事する人たち! こんな山奥で、レインウェアに身を包み、水と石を相手に奮闘している人たちがたくさんいることが驚きでした。おじゃまだったらごめんなさい、という気持ちで

ありがとうございます♪

と、挨拶した。皆さん、軽くうなずいてくれて好意的に見えて…よかった(ホッ)

空に吸い込まれていくワイヤー。

甚之助谷の末端に架かる橋の上から見下ろすと…。川の水は、万才谷との合流地点(柳谷導流堤がチラリ)で少し右に振れて柳谷を流れ下り、さっき見た別当出合の吊り橋の下を更に下って行く…。その先は細谷川、そして市ノ瀬…。繋がった♪ 上流側を見れば…

甚之助谷砂防堰堤!しかし、なにか違和感が…そうだ、片がっている。右岸側が前に出てきている⁈ よく見れば、その上にできた堰堤もまっすぐじゃない⁈。水も右岸側を流れてて、ここでも「動く谷」を実感。

ここまで来て、ようやくこの現場の本来の目的を知りました。今ここでは、地すべり災害を防ぐために 地下水を抜く という作業をしているのです。

「甚之助谷左岸ブロック集水ボーリング工事」
甚之助谷は、日本最大級の地すべり防止区域で、国は5つのブロックに分けて対策工事を施しています。地すべりの原因は、万才谷にできた亀裂に河川水が浸透し、地すべりブロックへ地下水として供給されるため。融水や大雨で流水が亀裂に浸透する前に別の谷へ排水することで地すべりの動きを抑制します。
写真を使って説明を受ける。この谷はヤバすぎます!
橋を渡ったところに集水井があり、覗いて見たらと係官がいうので、網の目の奥に目を凝らすと、階段らしきものが見えました。
斜面に「甚之助谷第7号排水トンネル」と書かれたトンネル(横穴?)。ドカンと空いた穴の詳細は次回の研修でわかるかな、と期待しつつ、今回は眺めるだけ
見ごたえのある不動滝と
柱状節理に癒され♪ バスに乗り込み、最後にやってきたのは

④市ノ瀬砂防堰堤

いつもながら、美しい水のヴェール♪ 雨が止むことはないけど、そのおかげで今日は、行く先々で躍動感のある流れに遭遇してる。ラッキーというべきなのか…💦

ここでは、副堰堤の改築工事が行われていました。
昭和29年完成の市ノ瀬砂防堰堤は、老朽化や石積みの損傷が著しいため、堰堤下流側への厚さ1.5mのコンクリート腹付け及びアンカー工による改築により堰堤の機能保全と強化を促進しています。
ということで、さっそく足場を駆け上がり、アンカー工をまじかで確認!これで、腹付けだけでは足りない強度を補ってるわけね♪
そして 堰堤下流側への厚さ1.5mのコンクリート腹付け鉄筋を挿入して、型枠を組み、コンクリートを流し込み、補強します。網代に組まれたこれは…ユニット?これが型枠になるの?彫り模様が美しい自然石、完成後がメチャメチャ愉しみ♪
帰りぎわ、ふと目にした工事看板「昭和28年の現場風景」大きな機械はなく、全て人力での作業。たったの68年前、今とは違う、肉体を酷使する仕事が常だったようです。これを見ると、日本人の忍耐強さや妥協を許さないモノつくりへのこだわりを感じます。

現場見学を終えて

雨の影響を危惧していましたが、ホント心待ちにしていたので、予定通りに終えることができてよかったです。

市ノ瀬から別当出合に通じる「資材運搬道路」ですが、あの「チブリ・別山」へ向かう道路とイコールだったこと、登山口との分岐に立ち、この先はどこに通じているのだろう…と思いを馳せた日々は、すでに忘却の彼方(笑)

そして一般道路からはなかなか見れない細谷砂防堰堤を、今回は車窓からとはいえ、目にすることができました♪

柳谷導流堤では、河床勾配1/2~1/3が、想像していた以上に急であったこと、増水した不動滝の水の流れが、計算通りに流路に導かれていたこと(まさしく導流落差工)、無人化施工で造られた円形型枠ブロックのひとつひとつを目視できたこと、その仕上がりがとても美しかったこと、などなど、感動は尽きません。

今目の前にある、地すべり・崩壊の危険、それを防ぐために働いてくれている現場の方々の存在も忘れられません。協力くださった全ての皆さんに感謝です。

白山砂防(尾添川流域)現場研修♪~2021.11.5
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