白山手取川ジオパーク「水の旅案内人&白山砂防女性特派員」の “pochi” です。
今回の活動は、富山県にある “立山カルデラ” の現地視察♪
砂防の現場は、白山だけではありません。
他砂防を知ることは、自分たち(白山)の砂防を理解することにつながる。いい刺激を貰えそうです!
「カルデラ」というのは、火山の活動によってできた大きな凹地のこと、火山体の崩壊・陥没によって形づくられたものが多いらしい
東西約6.5km、南北約4.5km(標高差 500~1700m)もある巨大なくぼ地で、立山火山によってできた谷が激しい侵食作用によって拡大してできた「侵食カルデラ」といわれている。崩壊し堆積した土砂は、大雨の度に下流域で大災害をもたらしてきたため、100年も前から砂防工事が進められている。
①立山カルデラ砂防博物館
金沢河川国道事務所からバスで2時間走って、富山県中新川郡立山町芦峅寺(アシクラジ)にやって来ました。
ここは「立山カルデラ」と「立山砂防」をテーマとした公立博物館。
白山砂防科学館の立山版といったところでしょうか、ずっと来てみたかったんです♪
「その鍋底は大地ののぞき穴」
ホームページを見たらこんな言葉が目に飛び込んできます。
カルデラの語源は、スペイン語の「鍋・釜」、その底を覗いたら見えてくるものって⁈ 期待が高まります♪
入館すると、エントランスホールに学芸員の方がいて、壁に掛けられた鳥瞰写真を見ながら解説が始まりました。
白い線で囲われたところがカルデラ内部、幾筋もの谷があり急傾斜の崖だらけですが、思ったより緑が多いように感じ「崩壊地」の暗いイメージが少し和らぎました。ただ囲われている(ろうと状)ことで、あらゆる吐出しが一点集中(写真下部)しているのが不気味。
白線の外側には、一般の登山客が通う「立山(雄山・大汝山・富士ノ折立)」の稜線が見えます。でも、その場所からこのカルデラの存在を意識する人は少ないと思います。
ホームページにあった「知られざるもうひとつの立山」を知りたい!と思いました。
とはいえ、ここでの滞在時間は30分、解説15分を除いたら… 見学も自然と駆け足になります💦
博物館では、立山や立山カルデラの自然や歴史、そして「砂防」を紹介しています。
館内は広くて、多くの資料、パネル展示や、立体模型も迫力があり、とてもわかりやすい!
気になったモノからピックアップ!
安政5年の大災害での被害範囲を立体的に表したもの
安政5年(1858年)2月26日に起こった「飛越大地震」で、立山カルデラは各所で崩壊し、その土砂が常願寺川の上流を堰き止め、自然のダム湖をつくりました。それが2度にわたって決壊し、3月10日と4月26日、大規模な土石流災害を引き起こし、流域一帯では甚大な被害が出ました。
立山砂防のトロッコ 展示
等身大のトロッコ電車が館内に美しく展示されています!テンションあがります!
砂防の現場へ人と物を運ぶのに最適だったという「トロッコ」立山砂防にとって不可欠なものでした。
大場の大転石 模型
直径6.5m、重さ推定400トンと呼ばれるこの石は、大自然の力によって常願寺川の上流から平野部にまで流されてきました。土石流の脅威的な力を伝えています。
六九谷展望台からの眺め
迫力の地形模型に思わず食いつく!六九谷(ロクキュウダニ)というのは、集中豪雨によってできた谷で、1969年にできたことからこの名で呼ばれているそうです。こんな景色が観れるなら行ってみたい!と思いました♪
オランダ人技師ムルデルとデ・レイケ
明治政府が、日本を近代化するために海外から呼んだ、外国人土木技師のうちの二人。オランダ人で、河川改修などの治水に尽力してくれました。
特にデ・レイケは、このころ白山砂防の視察もしていて手取川の洪水対策も練っていたし、「お雇い外国人」なんてどこか厭味に聞こえるけど(破格の給料だったから?)勲章を3回ももらうほど貢献してくれたんだし感謝しなくちゃですよね♪
あー時間が足りない・・💦 移動の時間です。
ここ、丸一日いても飽きないと思う、今度は一人でじっくり訪れてみよう!
建物をでると、目の前にこんな石碑が⁈ 入るときには、なぜか気づかなかった💦
「護天崖」と書いてあります。プレートを読んでみます。
「護天崖(ゴテンガイ)天崖を護る」
立山カルデラで、県営砂防事業が行われていた大正年間に、当時の県知事が現地の巨石に揮毫(キゴウ)(=筆で書く)したものといわれている。「天崖」とは、天のはて、極めて遠く隔たったところ、という意味で、富山平野の土砂災害を未然に防ぐために、天崖の地、立山カルデラを護るのだという先人の気概と使命感が、この三文字から伝わってくる。
立山カルデラに現存する「碑文」を再現したものだそうです。大正4年ごろに彫られたもので、洪水後に発見されて、泥谷第一号堰堤に設置されているそうです。これは、やっぱり実物を見なくちゃですよね!
②立山砂防事務所
次に向かったのは、博物館のお隣りのあるここ「立山砂防事務所」
…というと、まさに我らがボス、国交省管轄の出張所ってとこ?
そうです。土砂災害の恐ろしさと砂防を広く知っていただくため、現場体験や工事専用軌道の乗車体験、防災学習の支援などを行っています。
ということで、この「工事専用軌道の乗車体験」というのが、今回おしゃかになった訳ですが…(未練タラタラ…シツコイ💦)
正確には「立山砂防工事専用軌道」といって、国土交通省北陸地方整備局立山砂防事務所が管轄する工事用軌道(トロッコ列車)です。
展示車両があるというので歩きます。写真を撮り忘れました…
小屋の中にうすぼんやり見えますが…わかりませんよね💦
ここは「立山砂防の最前線」なのですね、説明する言葉にも熱が感じられます!
トロッコ(車両)の車庫、ですよね、線路のカーブがいいなー♪
建物のなかでは、カルデラ内にある砂防施設を動画で解説してくれました。
この「白岩砂防堰堤」というのは、本堰堤の高さが日本一(63m)なのだそうです。常願寺川の上流に大量にある不安定土砂を抑えるのが、役割だそうです。
移動です。
次の目的地は称名滝です!
途中、称名平休憩所の展望広場で昼食をとりました。
雨もなんとか持ちこたえてくれて、称名砂防ダムがいい感じで霧に沈んでいました♪
後で調べてみたら、称名砂防ダムは4基、少し下流にある雑穀砂防ダム4基と併せて8基の砂防ダムがこの辺りに造られているようです。県道を走るたび、りっぱな堰堤が気になっていたんですよね、こんなに近くで見れて満足🎵
③称名滝
称名滝は、日本一の落差(350m)を誇ることで有名な大瀑布ですが、10万年前は今より15kmも下流にあったとされています。立山火山の大噴火でできた溶結凝灰岩の溶岩台地(弥陀ヶ原)が、称名川の浸食によって深く削られて誕生したV字谷!
霧で上部が見えませんが凄い迫力です!水の力って凄いモノだなと感動します♪
展望スペースから見下ろすとこれまたいい感じ♪川の水、メチャメチャ澄んでますね♪
称名滝を含む称名峡谷は、自然景観に優れ、学術的価値も高いため「国指定名勝天然記念物」「日本の滝100選」に選ばれてます。
移動です。
次は、有峰森林文化村へ
バス移動は一時間ほどかかるらしく、ボーっと外を見ていたらこんな看板が…
「有峰有料林道?」あーこれ、薬師岳に登る人が、折立登山口に行くときに通る道⁈
有峰に着いたらこんな標識も…じつはまだ拝んだことない薬師岳、一人で行く決断がつかず「折立」の二文字を胸の奥にしまい込んでいたけど…なんだか急に近くなった気がした♪
もしかして…来年は行けるかも??
④有峰ビジターセンター・有峰湖(展望台)
急に元気が出てきた!さぁビジターセンターへ参りましょう♪
平日、他に人影もなし、車もなし、まぁビジターセンターってそんなもの(人はいるよね?)
目に飛び込んできたのはこの有峰湖周辺の立体地図!やっぱり3Dはわかりやすい。皆、今日見てきて気になった軌跡を辿る。
でも私がここでいちばん嬉しかったのは、これかも
いただきましたー!これから行く予定の「有峰ダム」カード♪
その有峰湖にやってきました。常願寺川支流の和田川を堰き止めてつくられた人造湖。
そしてダムは、堤体の両端が折れ曲がっているという、あれが有名なS字形堤体♪(横から見るとZ形)
戦前から戦後を通じ北電が社運をかけてつくったというだけあって貫禄もハンパない🎵
堤高140m、堤頂長500mの大型重力式コンクリートダム(北陸電力を代表するダム)
総貯水容量:2億2,200万㎥は、手取川ダムにも匹敵する規模
天気がよければ、優美な薬師岳が背後に見えるらしい、ダム湖100選にも選ばれている♪
因みにこのダムの目的はただひとつ!「発電(P)」だ。
規模は似てても、手取川ダムが「多目的ダム(FWIP)」であることとは、大きく異なる。
F:洪水調節 N:流水の正常な機能の維持 A:農業 W:上水道 I:工業 P:発電
それだけこのダムには、大きな期待が込められていたのでしょうね、富山県の今があるのは、このダムのおかげかも・・北陸電力の4発電所(和田川第一、和田川第二、有峰第一、有峰第二)の合計最大出力は、53万4千kW。これは、揚水発電を除いて日本で奥只見ダムに次いで第2位だそうです。
豊富な水資源と急流河川があれば、水力発電の出番です。手取湖(ダム)と有峰湖(ダム)は、似てる♪
さて、残すところあと一つ、立山砂防の基幹堰堤に突撃します!
⑤本宮砂防堰堤
昭和10年着工、昭和12年完成(早い!)
位置的には常願寺川の中流、平野部の手前で、土砂の流出を防止したり、調節したりすることで災害を防ぐ、ことを目的として建設された堰堤。
高さ:22m、長さ:107.4m、貯砂量500万㎥は、日本最大級!
常願寺川のような急流河川では上流の山間地域だけで流出土砂を抑えるのは難しく、本川沿いでも適切な砂防堰堤を設置することが望ましい、とされたようです。造られてから80年以上が経ってますが今もしっかり流域を災害から守っています。
「心のかけ橋」と呼ばれている橋に向かいます。
この橋は、対岸に住む人たちとの交流に使われていて地域活性の、文字通り “かけ橋” になっているそうです。
橋の上から眺めます。清流がきれいですねー♪
周辺は “水辺の学校” と呼ばれていて、野外学習体験の場ともなっています♪
「スパイラル魚道」というそうです。たしかにループしてる♪魚が遡上しやすいのだそうです。
これで全ての工程が終了?と思っていたら、平野部の常願寺川沿いを走っていたバスが、白い大きな建物のある敷地内に入りました。
⑥富山地区広域圏クリーンセンター
ごみ処理施設なんですが、ここの煙突上部に展望台がありました。
建物に入ってすぐのエレベーターで一気に最上階へ!扉が開くとそこには絶景が広がっていました!
絵画のよう…雨が降ってきましたがとても幻想的な景色♪
常願寺川周辺が見渡せます。この写真は、下流にカメラを向けたもの。手取川と同じように「霞提」が造られています。
晴れていれば、立山連峰もきれいにみえるそうですが…(雨が恨めしい)
そしてこの天空の回廊には、治水に関する資料や解説のパネルが多数展示されていました♪(下:一部)
常願寺川は、立山連峰から富山湾まで約56km、標高差約3,000mを一気に流れ下る、日本でも有数の急流河川です。昔から “あばれ川” として知られ、流域に住む人々は、たび重なる災害に苦しめられながらも、治水事業に取り組み、水の恵みを暮らしや産業に取り入れてきました。
現場見学を終えて
白山砂防と立山砂防に、多くの共通点があったことがよくわかりました。崩れる大地と真っ向勝負してきた人々の「負けない」想いは、時代や場所を越えて受け継がれていくのだと感じました。そして「SABO」が、とても誇らしく思えました。
残念だったのは、やはり上流域のカルデラ内を見れなかったこと、でも予習はしっかりできたので、来年の “出逢い” を楽しみにしたいと思います♪ 日頃の行いに気を付けて、絶対に「晴れて」もらいます!(笑)
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