令和2年度「水の旅学」学習会~第1回 マグマって何?地球って何?岩石って何?

「水の旅学」とは、白山手取川ジオパークをより深く知ってもらうための学習会です。午前中の座学と午後の現地見学会(任意参加)という構成で、毎年開かれていましたが、今年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のため、動画配信という形になりました。

まぁこれはこれで、自分のペースで学べそうなので、気落ちせず、毎回の配信を楽しみたいと思います♪配信は全6回予定、さっそく第1回の動画が届いたので見せてもらいましょう♪

今年のテーマは「地球ってどうやってできたの?なにでできているの?」です。

講師をしてくださるのは、金沢大学理工学域 地球社会基盤学類 地球惑星科学コースの「森下 知晃(もりしたともあき)教授、岩石研究のスペシャリストです。

動画は3つ、PART1、PART2、PART3に分かれています。ひとつづつ見ていきましょう♪

目次

Part1:結晶と非結晶~石って何?

◆ ロケーション:道の駅しらやまさんの傍にある手取川の川原

背景に手取川七ヶ用水大水門が見えます。白山手取川ジオパーク推進協議会の女性スタッフ、N嬢E嬢は、森下教授と問答を繰り広げています。

 

はじめまして!今回は、岩石って何か?マグマって何か?岩石とマグマの違いって何か?こんなところを明らかにしていきたいと思ってます

よろしくおねがいします!

ところで、なぜこの川原に来たのか、わかるかな?

(N嬢)石がいっぱいあるから?

そう、下流の川原の石を調べれば、上流のことがわかるからね

どんな石があるだろう、気になる石はあるかな

(E嬢)この白いのが気になります

石の色ってむずかしいんだよね
でも分類するときの判断基準になるよ

まず岩石は、鉱物ガラスの2種類に分かれる

鉱物は「結晶」、ガラスは「非結晶」。色は、鉱物(化学組成)やガラスの種類を反映しているけれど、風化によって変わるものもあるんだ

最初にできた色と風化によってできた色、それぞれの色を知っておくことが大事だね。自分が知りたいのは、どちらの状態のものなのかを押さえたうえで探すといいよ

(N嬢)同じ石(化学組成)なら、全て同じ色をしているはずですよね

同じ化学組成でも、鉱物(結晶)の大きさやガラスとの割合などで、まったく違う色であることも多いので判断が難しいんだ。専門家でも間違えることがある

 

 

3人は、気になる石を集めました。大小さまざまな石を前に、教授が聞きます。

それぞれ、どういう特徴があるかな?

(E嬢)これは、縞々ができてます

模様に方向性があるね、これは?

(N嬢)これは、ゴマ塩みたいです

これは?

(N嬢)いろんな石が埋まってます

そうだね、丸っこい石がそのまま埋まってるように見えるね

これはどうかな?

教授は、丸っこい石が固められたような石を指し出しました。

(N嬢)これは、一緒じゃないんですか?

見た目がよく似てるんだけど、これはコンクリートです

へー

コンクリートは、セメントで固めてあるけど、こっちの石は砂や泥なんかで隙間をうめてるんだ。それが固まったもの

(N嬢)コンクリートは、石じゃないんですか?

石の定義ってなんだろう?

例えば、人工ダイヤモンドは結晶だけど鉱物じゃない

天然のダイヤモンドは、結晶で鉱物

石の定義が、自然にできたものだとすると、これ(コンクリート石)は、石じゃないね

 

 

 

3つに分かれたね

砂・泥・石が固まったグループ、これは「堆積岩」の仲間

マグマが冷え固まった岩石、これは「火成岩」の仲間

温度圧力条件が変わって引き延ばされたこのグループは「変成岩」という仲間、ちょっと複雑な影響を持った石で、石川県の土台といったらこれらだな、この3つは覚えておこう!

(N嬢-変成岩を指して)これが最終形ですか?

石は変わらないモノじゃなくて形を変えるんだ。あっためられるとマグマができるし、そうすると火成岩になる。これが風化すると堆積岩になる。火成岩と堆積岩の温度と圧力が変わったら変成岩になる。というふうに、ぐるぐる回ってるんだ。

(N嬢)マグマってこれらの石の、基だと思えばいいんですか?

そうか、そもそもマグマが何かを知らないんだね、そこから説明しなきゃね

(E嬢)日本のマグマと世界のマグマは質が違うんですか?

そう、白山のマグマとハワイのマグマは違うんだ

(N嬢)じゃ、マグマが違うならできる石も違うんですね

そうなんだ。マグマが冷え固まったものが石なんで、マグマが違えば石も違う

(N嬢)石ができる温度は違うんですか?

そう、マグマができる温度、流れ模様をつくる温度、堆積岩ができる温度、みんな違うんだ

(E嬢)時間も影響しますか?

そうだね、時間は特にむずかしいね

あと、私が想像するマグマって、火山が噴火したときに足元(地中)から飛び出してくる感じなんですけど…

ハハ、皆、地面を掘ったらマグマが噴き出てくると思ってるみたいだけど、違うからね。あれは、教科書の描き方がわるい。地球は、石の星なんだ。マグマは、地下のごくわずかなところにできるって話をしなきゃいけないね

(N嬢)じゃ地球って、何からできているんですか?

おっ、ついに本質的な話がでてきたな

あとは研究室で話そう!

 

ということで、場所が変わります。

Part2:岩石とマグマと溶岩の違いって何?

◆ ロケーション:森下教授の実験室

森下教授が、地元で採取した石のコレクションを見せてくれてます。色や模様が独特なものばかりで、教授も子供のように嬉しそうです♪

なぜ、石を研究するのか?

地球は、水の惑星と言われているけれど、海は地表を薄く覆っているだけで量的には多くはありません。体積的に見ても、地球の大きさに比べて表層の水はごくわずか。地球の表層の大部分は岩石でできています。

岩石を研究することは地球そのものを知ることと同じ。岩石の歴史が地球の歴史といえるでしょう。

 

岩石とマグマと溶岩の関係は?

岩石は基本的には固体で、それが溶けて液体状になったものがマグマです。マグマは地下にありますが、地表に流れると溶岩になります。

 

岩石とは何か? 何でできているのか?

岩石は、鉱物(結晶)と ガラス(非結晶)でできています。

鉱物は、元素が規則正しく並んでいて周期性を持っています。結晶質の固体で、無機物で特定の化学組成を持っています。

ガラスは、粒子が不規則(バラバラ)状態で固まっているものです。

ダイヤモンドは、天然で産すれば鉱物、人工的に作ったら結晶と呼びます。

結晶のなかに鉱物があるというふうに思ってください。

石英(水晶)は、鉱物です。

花崗岩は、岩石です。石英、角せん石、長石などの鉱物が集まってできています。

単独で一つの結晶だけであれば、鉱物です。

マグマは、ゆっくり冷え固まると結晶になり、急激に冷え固まるとガラスになります。

自然は安定を求めるので、安定しにくいガラスは風化しやすいです。

 

とっても重要!SiO4四面体

地球の表層を構成している岩石で、覚えておかなければならない元素が「SiO4四面体」(シリカの四面体と呼びます)です。ケイ素原子(Si)1個と、酸素原子(O)4個で構成されています。地球表層の岩石の大部分の基本要素になります。

化学組成で示すと、石英(結晶)は、SiO2鉱物が規則正しく周期的に並んでいるのに対し、カンラン石は、SiO2四面体がバラバラになっています。できた隙間に、Mg(マグネシウム)や、Fe(鉄)といった元素が位置しています。

元素が規則正しく並んでいて、周期的に繰り返しているという鉱物の特徴は持っています。このように、SiO4四面体がどのようにつながっているのか、隙間にどういった元素が位置しているのかが重要です。

 

結晶とマグマの違い、どっちが楽?

SiO2鉱物は、元素が規則正しく周期的に配列しているのに対し、SiO2マグマは、SiO4四面体がところどころちぎれていて、バラバラになっている。

自然は楽な状態を選びます。楽な状態というのは、エネルギー状態が低い状態をいいます。

マグマの状態というのは、温度が高く、流動的になってしまう落ち着かない状態です。

地中にあるマグマと地表にある溶岩、ガラスができるのは溶岩のほうです。

 

Part3:地球は何でできている?

◆ ロケーション:ひきつづき 森下教授の研究室

森下教授が、好きな岩石の一つとして「縞状鉄鋼層」を取り上げました。手のひら大のそれは、鈍い赤・白・黒の湾曲した層を持っていました。なかなかにユニークな表情をしている石です。

この石の赤い部分は、鉄の酸化物です。縞状鉄鋼層は、地球の鉄の鉱床として有名です。大気中の酸素濃度が高くなったことによって、海の中に二価の鉄として溶けていた鉄成分が、水に溶けにくい3価鉄になることで、結晶化して、溜まったものです。この石は、とてつもなくオモシロイ!

 

パート3のテーマは、そもそも地球は何でできているか?です。

地球の内部をどうやって調べるか? 

一つは、掘削という方法です。

これまでに人間が掘った世界一深い穴は、12.262km、ロシアのコラ半島で掘削されたものです。これは地球の半径、6,370kmからみれば、ごくごくわずかなもので、地球の中身を知るには程遠いものです。

では他に、どんな方法があるか?

森下教授は、中に空洞を生じたスイカを例にとりました。そう、表面をポンポンと叩いて「音」を聞くことで、中身が推測できます。

では、地球の音って何でしょう? 地球を叩いた音とは何か?それは「地震(波)」です。

音は「波」。地球も、地面がズレることによって波が発生して伝わるのです。

 

覚えておきたいのが3つの層構造

地球の波の伝わり方で、地球の内部構造を調べることができます。よく、地球内部と果物は似ているといわれます。(アボカドの断面をみせて説明)

① 地殻:表層の皮の部分

② :種に相当する部分

③ マントル:一番美味しい果肉部分

確かに、アボカドの中身は、地球の内部構造とよく似ています。

 

波の性質を使って、どうやって地球の内部を調べるのか?

ここで、スリンキーと呼ばれる、バネ状のおもちゃを使った動画が登場します。

波には、縦波と横波の2種類があることを、スリンキーの波動を例に説明がなされます。

縦波はP波と呼ばれ、地震波の中でもっとも「速く」伝わります。(疎密波)下からドンと突き上げる感じです。

横波はS波と呼ばれ、P波の次に速く伝わります。グラグラと横に揺れる感じ

地球の中を、波がどう伝わるかをシュミレーションした動画が始まりました。

地球の半径、6,370kmのうち、P波は全般に伝わるけれど、S波は一部伝わらないところがありました。それが、地下2,900kmから5,200kmの間で、それよりも深く(中心に)なると再び伝わりだしました。

この波の伝わり方が急激に変化するところが、層構造の境界だと考えられており、それは4つに分かれます。

① 地殻:地震波の速度が急激にあがるところ

② マントル:徐々にスピードがあがっていくところ

③ 外核:縦波(P波)は伝わるけれど、横波(S波)が伝わらなくなっているところ

④ 内核:地球の中心に近く、縦波も横波も伝わるところ

 

地質の状態はどうか? 結論からいえば…

① 地殻 ② マントル ④ 内核 は、固体であり、③ 外核 は、液体である。

なぜわかるかというと…

横波は、伝わるものの形の変化(ひねり)によって伝わります。ひねりがあるのは固体だからです。液体や気体のように形の変化がないものには伝わりません。

S波は、固体しか通過できないことがわかりました。

 

組成はどうか? モノでみると…

地殻とマントルは、岩石でてきていて、核の主成分は (90%程度)だと考えられています。つまり、外殻は液体の鉄、内核は金属の鉄なのです。

圧力と温度の高低のバランスが、液体であることと固体であることを分ける要因となります。内核は、とてつもなく圧力が高い。これは、そもそも固体になりやすい性質であるといえます。なぜ地球の内核は固体金属で、外殻が液体金属なのか?おもしろいですね♪

 

マントルは、どろどろに溶けているのか?

波の伝わり方でいうと、S波が作用する部分なので、固体であり、岩石でできています。

なぜ、どろどろのイメージがあるのかといえば、教科書にでてくるプレート断面図のマントル部分が、赤く色づけされてきたせいだと思います。

もしマントルがすべて溶けていたとしたら(マグマだらけだったら)、火山は地球上のいたるところに出現するはずです。が、実際の火山や地震は…

例えば、日本やアメリカ西海岸などには多いけれど、北部ヨーロッパやアメリカ東海岸には見られません。とても安定した場所になっています。

マグマが存在する場所は、きわめて限定的であるということがわかります。

視聴を終えて

小学生のころの私は、本の虫でした。毎日通った図書室で、たまたま手に取った図鑑を開くと、エアブラシで描かれた太陽系のイラストが目に飛び込んできました。

見開きページの端に、真っ赤な太陽、その横に整然と並んだ球体の不思議さ(でも、ドキドキ♪)大きな目のあるもの、リングを巻き付けるもの、赤い星、茶色い星、大きいの、小さいの…とりわけ、青(海)・白(雲)・茶(大地)で描かれた地球は、最高に美しく…

中学生になった私は、宇宙にハマり、SF小説、宇宙漫画に没入していました♪

そんな私ですから、高校で「地学」が学べることは、密かな愉しみだったのです!が…理科は選択制、それも物理と生物の2者択一しかない!

ショックで気が動転していたのか、計算と数字が嫌いなくせに、「宇宙」に関係あるよね?! と早合点して「物理」を選んでしまい、憂鬱な一年を過ごしてしまいました。

 

と、こんなことを懐かしく思い出してしまったのも、今回の講座のおかげさまです。だいぶ時間は経ちましたが、こうして地球のことを学べる機会が巡ってきたのは必然だと思います。

自分がなぜ、こうも石に惹かれるのか、石でできた構造物、景観に「萌える」のか、シリーズが終わるころには、少しは解明できているかもしれません♪

第1回目の今回は、避けては通れない地球の根幹を学ぶことからスタートしました。今まで、うろ覚えだった浅智慧に、少しでも肉付けがなされるように学んでいきたいです。

自分本位な復習ブログですが、これも白山手取川ジオパークを知るための一歩、水と石が刻んだ大地の記憶を少しでも共有してもらえたらと思い、したためます♪

 

書き起しにあたっては、森下教授の言葉をできる限り忠実に拾ったつもりですが、文章を組み立てていくなかで、解釈も含め、教授の意図と異なってしまった部分もあるかもしれません。それらに関しては…

白山手取川ジオパークの「ファンサイト」(教科書ではなく学生のノート)であるという辺りをご理解いただき、ゆる~い目で見ていただけたらと思います。

伝えたいのは「Geo-愛」です!(ペコッ)

では、第2回動画「石と水の関係は?水はどこからやってきた?」へ続きます♪

まだまだ、掘って掘って、掘り下げた地球の話、聴かせてもらいましょうー♪

◆ ロケ地周辺にあるジオポイント◆

名称道の駅 しらやまさん
住所〒923-1208 石川県能美市和佐谷町200
交通アクセス白山ICから国道157号線を南へ30分
金沢駅から40分、松任駅から30分
関連HP道の駅しらやまさんHP

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